ビレッドはノルウェー語で「絵」、ヴェヴは「織物」のこと。 ビレッドヴェヴはノルウェーを代表する伝統工芸のひとつで色数が豊富な糸を “絵の具”にして織りながら描いていくという、まるで絵画のような伝統織物です。 その歴史は9〜11世紀のヴァイキング時代にまでさかのぼります。 海や戦場へと出かけていった夫や恋人の帰りを待つ女性たちによって織られ、 受け継がれてきたといわれています。
明るく強い原色が使われていること。寒く長い冬を耐えなければならない北欧の人々がどれほど太陽の光や緑、花、果実の実りに焦れているかが読みとれます。
ヨコ糸を一段一段しっかりと打ちこむ筬(おさ)には食事用のフォークが使われること。
さらに使用する糸は、基本的にはノルウェー独特の羊毛やスペルサーウールに限ること。この羊毛は毛足が長く(約30cm)、その毛先部は麻糸のように堅いので、織り目がつまり、何十年どころか何百年経っても型が崩れません。このため、かつては遺産相続の際、金銀に次いで価値があったものだといわれています。
王立ノルウェー手工芸美術学校(現・国立美術教育大学)に学んだ矢吹恵子は、熟練者でも1日数センチしか織り進めないというビレッドヴェヴの技を忠実に受け継いで、日本でただ1人その指導と普及にあたっています。